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サエコさんばかり責めてくれるなよ(失恋ショコラティエ感想)

当然ネタバレするし既に全部読んでること前提であらすじ紹介とか微塵もしないので読んでない人読まないでください。あと、言いたいこと全部盛り込んでたら上手くまとまらないまま6千字弱になってしまったのでお時間ある際に。

 

 

さて、すげー今更感アリアリですが2月に最終巻が出た失恋ショコラティエの感想です。脳味噌ド腐れゲロ豚ビッチと言われがちなサエコさんを擁護するために4千字まで書いてたところ読み返してるうちにあれやっぱりサエコさんはクソビッチ……?諸悪の根源……?という気になってきてしまった……。いやでもサエコさんは悪じゃない……サエコさんは悪じゃない!!!

サエコさんばかり叩くのは間違ってる!!みんなキュゥべえに騙されてる!!!! 

もくじ

  1. 何故サエコさんばかり叩かれるのが気に入らないのか
  2. そもそも何故サエコさんは叩かれるような行動をとるのか
  3. この漫画の片思いに感情移入できる人
  4. その他もろもろ

1. 何故サエコさんばかり叩かれるのが気に入らないのか

DVされてかわいそうじゃん。なんでみんなサエコさんのことクソビッチて言うの……。つってもDV始まる前から爽太に気があるみたいな素振りしまくってるしクソビッチにしか見えないですよね。一夫多妻でも一妻多夫でもない日本では「既婚者は貞淑たれ」って感じなので結婚後はパートナー以外とはデートとかしない方がいいに決まってる。

そう考えると確かにサエコさんはゲロ豚ビッチだし悪即斬。(途中までは)セックスしてないだけで浮気してるようなもん。

ていうかおばあちゃんちで美味しかったのはフレンチトーストとか言ってほんのり涙浮かべて最後良い話風にまとめてるけど、やってることは妊娠中に他人棒咥えこみまくって素知らぬふりですからね。かなり最悪ですね。

まあそこは大目に見て欲しい。だってDVされてかわいそうなんだもん(判官贔屓

つーかあんな男の子ども*1産んで育てるって決めたこともエラいと思う。あんな男とは言っても稼ぎはあるんだし最悪な相手ではないけれど……。

あとサエコさんのポジティブさは素晴らしいと思います。後述します。

2. そもそも何故サエコさんは叩かれるような行動をとるのか

サエコさんがクソビッチって言われるのは、既婚者であるにも関わらず爽太に対して気のあるような素振りを見せてくるからだと思うんですけど、でもサエコさんは別に爽太とか男だけにいい顔してるわけじゃなくて女にもいい顔してるっつーか要は結構割と博愛主義の人なんですよ。カオルコさんにもすげー優しいじゃないですか。

本当にサエコさんがゲロ豚ビッチだったら女友達なんて一人もいないはず*2爽太も高校時代にサエコさんのことを悪く言う人間もいたことを回想してるし*3実際結婚後も嫌ってる人間はいたんだろうけど、そんでも大人になってからも関係が続いてる友達がいるんすよちゃんと。サエコさん、結婚しても友達にバレンタインデーにチョコレート送ってるの。*4すごくないっスか。人間関係のテコ入れに余念がない。

好意的に解釈して、爽太への態度も人間関係テコ入れの一環、たまに会う友達とちょっと仲良くしてるだけのつもりなんじゃないかとか考えています。気を持たせるような感じになっちゃうのはそういう方法でしか男の人と接することができないタイプなのかもしれない(これは行き過ぎると誰とでも寝てサセコとか揶揄されるようになるコース)

サエコさんの不幸はそんな感じで、男友達と仲良くするときに色恋を匂わせる素振りしかできないことなんじゃないかとも思う*5これは多分わざとのところとそうでないところがある。彼女の場合。全部わざとで全部彼女の思うがまま、彼女の掌中で動いていることだったら、彼女はDV男となんて結婚してない。

サエコさんは「神様がそっと教えてくれたんじゃないかな」とかなんとか、ピンと来たから結婚したみたいなこと抜かしてるけどまああのゲロ豚ビッチがそんなそれだけで結婚するわけないっすよね(笑)相手がそれなりの収入や地位を持ってるからトータルで考えて結婚したんだろうと思う。*6言わずもがなですけど。

恋愛結婚損益分岐点というか……*7理想の結婚年齢*8もあるし、ここらで手を打っとかないといろいろ下降線になるなって思いもあって結婚したんでしょうね。いやまあ勿論全てが打算で動いてないって信じてますけど。サエコさん擁護派としては。

そしたら相手はDV男だったと。いやーなかなかの不幸。

そしたら爽太にも心揺らいでくるってもんですよ。

サエコさんとカオルコさん

サエコさんのこと憎んで嫌ってる人はサエコさんになんかされたわけじゃなくて自発的に憎んで嫌いにいってる人です(いろんな人を敵に回す発言)カオルコさんもそうです。強いて言うなら片思いの相手である爽太の気持ちを独り占めしてるサエコさんは間接的にカオルコさんにダメージを与えてるといえば与えてるけどそれって逆恨みだよねっていう。

まあなんだかんだでここら辺は克服されてるというか、カオルコさんはサエコさんが転がり込んできたときに「すごい神経ですよね」とかなんだの言ってサエコさんをなじってたくせに最終的にはいい茶飲み友達になってるんだしサエコさんはほんと大人だなって思います。あのシーンのカオルコさんいきなり突っかかってきてワケわかんねーじゃん。結婚してるのに「爽太くんに一番に好きになってほしい」て素で言ってるぽいサエコさんも理解に苦しみますけど……まあここは「好きに遊びとか本気とか考えたことない」って言ってるし先述の通りいろいろ悪気無くやってるんだと思います。サエコさんは。悪気がなければ何してもええんかって気もしてきたけど……。

ポジティブシンキングサエコさん

 「いつかその人が『会いたい人』になるかもしれないし」

 (7巻 p.175(Kindle版))

カオルコさんへの恋愛指南からセリフを引用しました。

サエコさんは「未来のさまざまな可能性を想定してる人」なんだと思います。

全ての出会いを前向きに検討する人だから男女問わず相手との関係性を無下にしたりしない。DV旦那とも最後はちゃんと向き合って自己主張して上手い落とし所に着地する。

サエコさんはモテキの夏樹ちゃん

わたし大していろんな漫画読んでないんで何でもかんでも大好きなモテキを例に挙げてしまって若干恐縮なんですけど、サエコさんはモテキの夏樹ちゃんに似てると勝手に思っています。ここで夏樹ちゃんを出してくるとサエコさんビッチ説の補強になっちゃうんだけど……。いやでも夏樹ちゃんも悪気はないんですよ。多分。

モテキ(4)

モテキ(4)

 

 

自分の思ってもない道に進む人生が好きなの

サエコさんも人生におけるある程度の不確定要素を愛する人なんじゃないかと思っていて、だから結婚式スイーツの打ち合わせの時にミニスカで登場したんじゃないでしょうか。この時のことを後に彼女は空振りに終わったと述べています。*9

さらに「あれが上手くいってたら人生変わったかも」とも言っているし、もし爽太が勇気出して攻略してたらちょっと違う世界線にいってたかもしれません。この話も「要は勇気」ってところありますね……ちなみに勇気を適切な場所で遺憾無く発揮するこの作品における勇者はオリヴィエで、彼は最終的にかなりの最短ルートで彼の望む幸せをゲットしています。

サエコさんまとめ

グダグダ長くなってしまったので短めにまとめると

  1. サエコさんは博愛主義者で男にも女にも優しい
  2. でも男に対してはちょっと色気出しちゃうことがある
  3. でもそれはわざとだったりわざとじゃなかったりする
  4. そんでもって旦那がDV男だったから爽太に気持ちが傾いちゃった
  5. サエコさんは結婚してもたえずたゆまずあらゆる出会い、未来の可能性を前向きに考える人

ってまとめるとサエコさんが100%悪のゲロ豚ビッチとも言えなくもないんじゃないっすかね……特に1番と5番。どうでしょう。

サエコさんに悪気はない」って主張なので自分にも小動家DNAが混じってて騙されてるのでは?って気になってきましたがサエコさんのポジティブさやパワフルさは見習うべきところが大いにあると感じます。

3.  この漫画の片思いに感情移入できる人

こっから先はサエコさん以外の話です。

この漫画は爽太のど〜しようもない片思いに対してイライラMAXになる人が多いようなんですが私は昔似たようなど〜しようもない片思いみたいな恋愛を5年以上してたことがあって、かなり感情移入して読みました。特に下のシーンは読んでてちょっと泣いちゃった。

わかったよ なんで俺がずっとずっと

サエコさんを想うのをやめなかったのか 

怖かったんだ サエコさんを想ってた自分とさよならするのが

頭の中をいっぱいに満たしてたものを手放して

からっぽになるのが怖かったんだ

 (5巻 p.116 (Kindle版))

この後「自分のために恋してた」みたいなモノローグが続きます。

損切りできない状態というか……。お金の問題だけじゃなくてそれまで積み重ねてきた自分の思いに見合うだけのリターンがきてないから今諦めるのも嫌だし……つってズルズル時間だけ経っちゃうみたいな。

「ど〜しようもない片思い」を年単位で経験した人は割と爽太に共感するところも多いのではないかと思うのですがどうでしょう。人によりますかね……。相手はまあ二次元でもアリかもしれない。とにかく「手の届かない相手に長いこと懸想する経験」、それがこの漫画に深く感情移入して読むために必要なものなのではないかと考えます。

3. その他もろもろ

  • ドラマ化以降メチャメチャ絵が雑になったのだけめちゃめちゃ残念でした……。
  • えれなは最後に言うこと言ってえらいし幸せになってほしい。サエコさんもえれなもだけど最後は「チョコによって勇気を得る」描写があってチョコ漫画面目躍如感ある。
  • まつりとオリヴィエのエピソード別にいらなくねって思ったけど最後ああなってビビりました(ピアスはちゃんと荷物取りに行くシーンで伏線張ってあってすごい)爽太とえれなの結婚式エンドだと流石にうまく行き過ぎなんで、2人の結婚式で〆るのは最後らしい盛り上がりを作るにはアリでしょう。でも浮気されたまつりの友達、まつりがあんなイケメン外国人御曹司と結婚したって知ったらマジ魔女化しそうで大丈夫?って思います。でもそこでまつりとオリヴィエが結婚躊躇わなくちゃいけないこともないし、難しい。
  • ドラマは石原さとみの唇と水原希子のお風呂シーンが最高だったことしか覚えてないです……あとゴールデンボンバーの人の実況が超面白かった。

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*1:爽太の子どもではないんでしょうね。ちなみにどのタイミングで妊娠に気付いてたのか明確に描写してないところがこの漫画は上手いと思います。

*2:フィクションだから都合よく描いてるってツッコミはこの際なしで

*3:1巻、Kindle版だとp.16

*4:6巻 Kindle版だとp.84

*5:そしてそれこそが所謂「女子力」と言われる場合もありましょう。

*6:収入や地位を持ってるところを魅力に感じることは全然悪くないと思います。人間、それなりの収入を得るためにはそれなりの努力が必要だし。

*7:これなんか適切な言葉あったら誰か教えてください。わかんない

*8:サエコさんは26歳で結婚したかったと8巻 p.90(Kindle版)で言っている

*9:3巻 p.100(Kindle版)